田沼靖一『ヒトはどうして死ぬのか』

ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)

ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)

原核生物は、遺伝子のセット(ゲノム)を一組だけ持つ「一倍体」の生物です。一倍体の生物は、同じ遺伝子をコピーしながら無限に増殖を繰り返し、“親”も“子”もなく絶えず殖えていく生き物です。そこには、急激な環境変化などによる「事故死」が起こる以外、自ら死んでいくという「死」は存在していませんでした。(p.138)

二倍体細胞生物は、父親と母親から一組ずつ遺伝子のセットを受け継ぎ、二組のセットを持つ生き物です。二倍体細胞生物の誕生とは、地球上に初めて「オス」「メス」という「性」が現れたことを意味しているのです。
生命進化の歴史を見ていくと、「死」という現象が現れるのはまさにこのときです。つまり、二倍体生物が誕生して「性」が現れたとき、同時に「死」が生まれた――と言うことができます。


「性」によって遺伝子のシャッフルを行うことで、有性生殖